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新刊の文庫小説を★の数で採点し、稚拙な文章も添えます.。ネタばれは少なめに、皆さんが本を手に取るきっかけになれば幸いです。                                                            
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武士猿 (集英社文庫)武士猿 (集英社文庫)
(2012/05/18)
今野 敏

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評価:★★★★★

単細胞の美学

明治初期、琉球王朝の末裔として生まれた本部朝基は、王家に伝わる武術、手の実戦修行を繰り返していた。噂を聞きつけた猛者たちの挑戦を受け、鍛錬を積む日々。やがて拠点を内地へ移した朝基は、柔道やボクシングの使い手と他流試合を行うようになる。生涯を掛けた戦いの果てに辿りついた真理とは…。

「強くなりたい」・「己の武術を世に知らしめたい」…その為に強い相手がいると聞けば立ち合いを挑み、達人がいると聞けば教えを乞う。名声が響き渡り、挑戦を受ける側になっても、根っこの部分は変わらない。派手な死闘や大逆転劇があるわけではなく、淡々と愚直な男の生涯が描かれていきます。

途中であまりにもワンパターンな展開に戸惑いを覚えるものの、その一貫した姿勢こそが本書の最大の見所でもあります。格闘漫画でよく見られますが、蓄積したダメージにより、最後は指先の一押しで倒されてしまうように、本書の魅力に屈していきました。
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[2012/05/29 17:18] | ★★★★★
[tag] 今野敏
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IN (集英社文庫)IN (集英社文庫)
(2012/05/18)
桐野 夏生

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評価:★★★

20年後にまた読みたい…

かつて小説家の緑川未来男は、愛人の存在に嫉妬した妻の狂乱を『無垢人』という小説で赤裸々に書いた。そして今、小説家の鈴木タマキは、『無垢人』に登場する愛人「○子」を主役にし、己自身の恋愛の狂乱と抹殺を『淫』という小説を書こうとしていた。タマキはまず「○子」が誰であったかを特定しようと、関係者に取材を始める-。

全く無駄のない洗練された文章に脱帽です。タマキとその不倫相手の逢瀬は生々しく、見てはいけないものを見ている感覚は刺激的ですし、「○子」の正体を探る過程も興味深いです。

一方で★★★という評価の通り、それ以上のモノを読み取ることが出来なかったのも事実です。というのも、私自身がこの作品の本質を理解するには未熟過ぎるような気がしてなりません。主人公のタマキに感情移入するには、同じような恋愛経験や小説などの創作経験がないと難しく、あらゆる意味で玄人向けの作品ではないでしょうか。
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[2012/05/24 16:26] | ★★★
[tag] 桐野夏生
トラックバック:(1) |
ダウン・バイ・ロー (講談社文庫)ダウン・バイ・ロー (講談社文庫)
(2012/05/15)
深町 秋生

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評価:★★★

女子高生×超絶バイオレンス

親友であったはずの遥が自殺した。私達がお金をたかっていたせいなのか…??周囲の冷たい視線に晒されながら、響子は鬱屈した日々を送る。そんな最中、彼女の住む街で幼子が惨殺されるのを皮切りに、不可解な事件が相次いで起こる。一連の事件が繋がった時、驚愕の事実が浮かび上がる。

序盤のミステリー・サスペンス調から一転してハードボイルドな展開に…女子高生が肉体的にここまで傷めつけられる作品も珍しいです。二転三転する展開のおかげで退屈することなく、最後まで一気に読み進められます。

人物描写も凝っていて、中でも外見の描写から伝わって来る存在感は圧巻です。しかし一方で、同じような役割を課せられた人物が複数登場するせいで、個々の描きこみが中途半端になり、全体のまとまりも悪くなっています。

さらに欲を言えば、エキセントリックな母親にもう一つ見せ場(敵方とのアクションシーン)が欲しかった。
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[2012/05/22 16:03] | ★★★
[tag] 深町秋生
トラックバック:(0) |
ヘヴン (講談社文庫)ヘヴン (講談社文庫)
(2012/05/15)
川上 未映子

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評価:★★

過剰な演出がことごとくマイナスに作用

斜視を理由に『ロンパリ』というあだ名を付けられ、執拗ないじめを受ける僕。ある日、筆箱に「わたしたちは仲間です」とだけ書かれた小さな紙を見つける。差出人名は家が貧乏で、いつも不潔だという理由でいじめを受けているコジマという女の子であった。虐げられる二人の間で手紙を通じた密かな交際が始まる…。

いじめられる者同士の共感や連帯、果てはロマンスにまで発展しそうな予感さえする序盤は目新しさも伴って、なかなか興味深いです。

しかしながら、コジマの素性が明らかになればなるほど、二人に対して感情移入ができなくなっていきます。なぜなら、主人公がいじめられる理由とコジマがいじめられる理由には決定的な違いがあり、本来はその差から共感や連帯ではなく、嫌悪や対立が生み出されるはずだからです。二人の絆を敢えて曇らせるような設定は明らかに余計です。

また、本作の大きな山場である主人公と百瀬の会話も悪い意味で踏み込み過ぎです。いじめられる側といじめる側の論理を超越した次元での会話は全くこの物語には還元されていません。クライマックスも駆け足気味で、なんだか拍子抜けです。
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[2012/05/18 14:45] | ★★
[tag] 川上未映子
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ドーン (講談社文庫)ドーン (講談社文庫)
(2012/05/15)
平野 啓一郎

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評価:★★★

凄いことが描かれている一方で…

2033年、宇宙船DAWNは、有人宇宙船として人類史上初めて火星に降り立つ。医師である佐野明日人(さのあすと)は二年半に及ぶ航海を経て帰還するが、DAWNの中で起きていたあることが彼を悩ませ続ける。アメリカ大統領選の結果をも左右する彼とクルー達が抱える重大な秘密とは……。

近未来の複雑な設定に加えて、人も時も目まぐるしく入れ替わる為、決して読み易い作品ではありませんが、事件の輪郭が朧ながら掴めてくる中盤辺りからぐっと物語に引き込まれていきます。

クルーの一人で共和党副大統領候補の娘であるリリアン・レインと民主党候補の契約映像作家のアシスタントであるジム・キルマーの物語はどちらも緻密でありながらもスケールが大きく、本当に魅力的です。

しかし、先の二人に比べて、主役である明日人の物語だけが嫌に所帯じみています。スケールが小さい割には詰めが甘いと感じる部分も多く、悪い意味で浮いていると言わざるを得ません。
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[2012/05/16 18:06] | ★★★
[tag] 平野啓一郎
トラックバック:(0) |
動物園で逢いましょう (双葉文庫)動物園で逢いましょう (双葉文庫)
(2012/05/10)
五條 瑛

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評価:★★★

BL(ボーイズラブ)要素満載のスパイ小説!?

在日米軍情報部の下請け情報機関に所属するアナリスト・葉山隆。本部からの指令で、親北朝鮮派の元国際政治記者である仁志洋介と接触し、情報提供者として協力を乞う任務を言い渡される。現役を退いた一記者から本部はいったい何を得ようとしているのか…。

『鉱物シリーズ』の番外編となる連作短編集です。メインとなる事件を初め、比較的に小さめの事件が描かれていきます。それ故にとにかく地味……リアルな情報戦という見方も出来ますが、過去作を読んでいてある程度は登場人物に思い入れがないと物足りないかもしれません。

本作の特徴として、過去作では主人公ともっといがみ合っていたはずの上司や同僚との関係が変化しています。作中ではアナリストとして成長した主人公を二人が認め始めたという解釈がされているようですが、それを通り越してなんだか『良い感じ』なのです。ちょっとむず痒くなる程に……。

それでも最後の『エピソード1 街角の向日葵』は最高です。ありがちなエピローグかと思いきや…物語の続きを読みたい気持ちと読みたくない気持ちが拮抗する程の妖しい魅力に溢れています。
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[2012/05/11 15:00] | ★★★
[tag] 五條瑛
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さよならのためだけに【徳間文庫】さよならのためだけに【徳間文庫】
(2012/05/02)
我孫子武丸

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評価:★★★

興味深いテーマですが、押さえるべき所が押さえられていないので…。

ハネムーンから戻るなり、“さよなら”を決めた二人。けれど、結婚仲介を行うPM社の相性判定で『特A』という最高な評価を受け、さらには夫がPM社で勤務する二人の離婚はそう簡単に認められない。国の完全なバックアップを受けた巨大企業PM社に対して、二人の“別れるための共闘”が始まる…。

少子晩婚化が進む社会で、「PM社がいかなる手段を用いて飛躍的な成長を遂げたか」が描かれた序盤は現実の問題とも密接にリンクしているので、掛値なしに面白いのですが…

そもそも主役二人の相性が初めからそれほど悪いわけではなく、女性側のいわゆる『マリッジブルー』程度にしか感じられません。そのせいで、物語への求心力を著しく欠いています。

PM社の『真の目的』についても、意外性がないどころか、それは会社も顧客もハナから折り込み済みなのでは…?

早い段階でオチが読める点には目を瞑るとしても、黒幕については彼が真のボスであるという設定にしていないせいで面白みが半減しています。
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[2012/05/08 17:12] | ★★★
[tag] 我孫子武丸
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暴行 (新潮文庫)暴行 (新潮文庫)
(2012/04/27)
ライアン・デイヴィッド・ヤーン

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評価:★★★★

期待していたモノとは全く別種の感動がある作品です。

夜勤から戻ったキャットは、自宅のあるアパートメントの中庭で暴漢に襲われる。幾多の住人が犯行の模様を目撃しながら、誰も通報しない。浮気を妻になじられる中年男・重病の母親を介護する青年・パートナーを交換し合い、性交を楽しむ夫婦…彼らもそれぞれ、己の人生の岐路に立たされていたのだ―。

アパートの住人一人ひとりの人生がドラマチックに描かれるていくので、読み応えは十分にあります。但し、肝心のテーマである『傍観者効果』という観点から見ると、逆にそれが大きな足枷となってしまっています。彼ら、彼女らが中庭で起きている事件に対して、何のアクションが起こせなくても不思議ではない程の状況に追い込められているので…。

それでもクライマックスに向けて、それぞれの人生がある帰結を迎えていく様には大きなカタルシスがあります。決して幸福とは言えない彼ら、彼女らの人生が何故か光り輝いて見えてくるので不思議です。
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[2012/05/05 20:21] | ★★★★
[tag] ライアン・デイヴィッド・ヤーン
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ロスト・トレイン (新潮文庫)ロスト・トレイン (新潮文庫)
(2012/04/27)
中村 弦

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評価:★★

二昔前のRPGゲームのような作品です。

「日本のどこかに、誰も知らない廃線跡がある。それを最初から最後までたどると、ある奇跡が起こる」…奥多摩の廃線跡を訪ねた牧村は鉄道マニアの平間老人と出会い、二人は世代を超えて酒を酌み交わす仲になる。ある時、馴染みのバーで平間老人が『まぼろしの廃線』の話を上気した様子で語り出す。ほどなくして、消息を絶ってしまった平間老人の行方を追って、牧村は彼の知り合いを訪ね歩くことになるが……。

一本道のストーリーを役割が固定された登場人物達によって進められていきます。能動的な作業があるゲームならまだしも、小説としては明らかに物足りない。鉄道に関心が強ければ、また別の楽しみがあるのでしょうが…。

とにかく、わざとらしい言動には辟易するし、文字通り『夢のお告げ』には本当に興ざめします。

加えて、登場人物達の行動も著しく説得力に欠ける点もいただけない。「喉元過ぎれば熱さ忘れる」…現在進行形の苦難ならともかく、過去の出来事にそこまで縛られるものでしょうか。
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[2012/05/02 16:06] | ★★
[tag] 中村弦
トラックバック:(1) |

「ペラガール」の方がハッピーかも
カウェン
もちろん、読み手によりますが・・・。
新作の「ペラガール」は鳥人間コンテストを
題材にした小説ですが、飛ぶまでの事とかが
物語に織り込まれていて、その点、とても
面白かった。

ネットでは、中村さん作品の面白さの源泉は
「体験」にある、そんなこと書いてあるサイトを
見つけてしまいました。
http://www.birthday-energy.co.jp
裏方の苦労も含めてしっかり取材されたのを元に
作品にされたものは、それなりに面白い、
といったところでしょうか・・・。


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