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新刊の文庫小説を★の数で採点し、稚拙な文章も添えます.。ネタばれは少なめに、皆さんが本を手に取るきっかけになれば幸いです。                                                            
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鬼の跫音 (角川文庫)鬼の跫音 (角川文庫)
(2011/11/25)
道尾 秀介

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評価:★★★★

『道尾印』は薄いですが、それがむしろ功を奏したと思える作品です。良い意味で作者の印象が変わりました。

刑務所で作られた椅子に奇妙な文章が彫られていた。家族を惨殺した猟奇殺人犯が残した不可解な単語は哀しい事件の真相を示しており……(『犭(ケモノ)』) 全六編から成る短編小説で、静かに狂った登場人物達の狂気を描いた作品です。

どの作品にもぞっとする展開が用意されており、かなり良く出来ています。中でも『犭(ケモノ)』が特におすすめでオチには思わず唸ってしまいました。作者の長編に見られがちな『アイデアの詰め込み過ぎ』がないので、個々の物語が持つ魅力が最大限に引き立っています。

但し、「看板(帯文)に偽り有り」と言いますか…『あざやかな仕掛け(トリック)を堪能せよ!』『すべてを読み終えてとき、人間というものの正体が浮かび上がる。』というのはキャッチコピーとしては適切でない気がしますし、序盤の作品にインパクトが強かったので若干尻すぼみの感があったことが惜しまれます。
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[2011/11/28 19:51] | ★★★★
[tag] 道尾秀介
トラックバック:(1) |
楽園 (中公文庫)楽園 (中公文庫)
(2011/11/22)
樋口 有介

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評価:★★★

「作者が好きだから」or「あらすじを読んで面白そうだから」と本書を手に取った方はおそらく期待を裏切られるのではないでしょうか…

物語の舞台はアメリカと日本から経済的援助を受けている南太平洋上の小さな島国。CIAの現地駐在員である主人公は表向き雑貨輸入会社をしながら、島での平穏な生活が続くことを望んでいる。しかし、国では余命半年とされる大統領の後継者争いを巡り、水面下で政治家同士の権力闘争が起こり始めていた。そんなある日、皆から変人扱いされていた反社会主義者の島民が衆人環視の中で爆死するという事件が起きる…

西洋文明や貨幣経済に対するアンチテーゼというテーマに沿って、丁寧に描かれた作品です。大きなテーマを登場人物を上手く操りることで、コンパクトにまとめている良作ですが…

ミステリー要素や派手なアクションがほとんどなく、主人公の思想や目的もはっきりしないので、物語の推進力は弱いです。全般的に読者へのサービスが少ない為か、作者のファンサイトの投票でも全四十数作をおさえて最下位だそうです。しかし、作者にとっては今でもマイベストと称する作品とのことなので、一読する価値はあるのではないでしょうか。
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[2011/11/25 21:21] | ★★★
[tag] 樋口有介
トラックバック:(0) |


みみ〜
なるほど、読んでみます!


文雀
みみ~さん

駄文をお読みいただいた上に、コメントまで
いただき誠にありがとうございます。

本当に励みになります。



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鉄の骨 (講談社文庫)鉄の骨 (講談社文庫)
(2011/11/15)
池井戸 潤

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評価:★★★★

相変わらず「外さないな」というのが率直な感想です。本書もお堅い企業小説ではなく、万人向けのエンターテイメント小説に仕上がっています。

大学の建築学科を卒業、中堅ゼネコンに入社して四年目を迎える主人公。ある日、突然本社の『業務課』への異動を言い渡される。ずっと現場で働いてきた自分が何故?『業務課』の仕事は大規模公共工事の受注獲得、役所への根回しや入札業者間での工事価格の調整…すなわち『談合』であった。『談合課』とも揶揄される『業務課』において主人公は現場では見えなかった現実と向き合っていくことに…

他の方のレビューで『談合』や『主人公とフィクサーとの関係』等についてもっと描き込んで欲しかったという声もちらほれ聞かれ、そのあたりについては私も概ね同意見です。しかし、文庫版で600ページを超える分量にもかかわらず、「もっと掘り下げて欲しい」という声が聞かれること自体が同時に作者の凄さを物語っているような気がします。

最終的に本筋とは上手く絡まなかったという印象もありますが、主人公と銀行員である恋人との関係は大変興味深いものがあります。特に序盤の気まずい雰囲気は秀逸で、「このすれ違いはきついな」と他人事ながら思わず胃が痛くなる程です。男女ともに多少なりとも身につまされる部分はあるのではないしょうか。帯に書かれた『彼女とヤバい。』は伊達じゃないです。
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[2011/11/21 19:15] | ★★★★
[tag] 池井戸潤
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サザンクロスの翼 (文春文庫)サザンクロスの翼 (文春文庫)
(2011/11/10)
高嶋 哲夫

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評価:★★★

シンプルな冒険活劇です。伏線による話の盛り上げ方が上手いので思わずグッとくる場面も多いのですが、根本的に気になる点が…

第二次世界大戦末期、アメリカ育ちの日本軍パイロット(峯崎)は特攻に失敗し、無人島に不時着する。機体が爆発寸前のところで、海軍から脱走してきた整備兵(野村)に命を助けられる。軍に再び戻る気がない二人が無人島生活を送っていたある日、一機の輸送機が黒煙を出しながら島に向かってくる。二人は輸送機が着水した場所まで行き、機内を探索していた所、突然謎の女性(マリア)に銃を向けられることに…

機体の歴史が詳しく描かれ、誰がどの機体に乗って戦うのかという部分にもきちんとしたドラマがあるので戦闘機同士の空中戦は本当に感動的です。主人公の峯崎とその上官や下士官との人間関係の描き方も素晴らしいのですが…

準主役的な立場の野村とマリアにあまり魅力がありません。取ってつけたような個々のエピソードは中途半端だし、峯崎との関係性や因縁も薄いです。小説を映画化する際にバーターで登場する売り出し中の若手みたいな立ち位置と言いますか…別にこの二人がいなくても物語は成立出来たのではないでしょうか。
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[2011/11/18 19:21] | ★★★
[tag] 高嶋哲夫
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パンチョ・ビリャの罠 (集英社文庫)パンチョ・ビリャの罠 (集英社文庫)
(2011/10/20)
クレイグ・マクドナルド

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評価:★★

B級バイオレンス映画のような作品で内容は極めて薄いです。さすがにこの手の物語を文章だけでなぞるのは…

アメリカとメキシコ国境の町。酒場で主人公の目の前に置かれたのはメキシコ革命の英雄『パンチョ・ビリャ』の生首…行方知らずだったはずのモノが何故こんな所に?期せずして生首を所有することになった主人公に『秘密結社』や『悪党』が容赦なく襲いかかる。ルール無用の争奪戦の決着はいかに!!

序盤はもろに映画的です。芝居がかったセリフ回しと惜しげもない銃撃戦で、複数の勢力間で生首の争奪戦が繰り広げられます。いっそのことそのテンションのままでカラッと終わらせてくれればまだ良かったのですが…終盤にかけて何だか湿っぽい話が多くなっていき、テンポも悪くなります。作者が「まだこれで終わりじゃないぞ」と意気込んで書いたとみえる十年後のエピソードも冗長的なだけで、あまり上手く機能しているとは思えません。

実在の人物や映画が多数登場するので、アメリカの歴史や映画に詳しければもっと違った楽しみ方があるのかも知れませんのであしからず…
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[2011/11/14 19:56] | ★★
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身の上話 (光文社文庫 さ 11-11)身の上話 (光文社文庫 さ 11-11)
(2011/11/10)
佐藤正午

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評価:★★

読了後も「いったい誰の何についての話だったのか?」と首をかしげたくなる作品です。終始にわたり作者の都合が優先され、読者は蚊帳の外といった印象を受けます。

地方都市の書店で働く平凡な女性(ミチル)は都内の出版社で働く妻子ある男性と不倫関係を続けている。ある日、ミチルは仕事の休憩中に不倫相手の男性を見送りにいくつもりが、衝動的に東京までついていってしまう。ほんの数日ばかり滞在するつもりだったが…ミチルが東京で体験した壮絶な出来事を彼女の夫と名乗る人物が述懐していくという形で物語は進行していきます。

先の展開が気になるので、最後まで飽きずに読み進められる点だけは良かったと思いますが…

そもそも結末ありきの作品なので、もっとシンプルにゴールまで進むべきだったと思います。あらゆる要素を盛り込もうとした結果、作品全体に無理が生じています。登場人物のセリフや行動に不自然な点が多いのもそのせいではないでしょうか。『宝くじ』の下りも、それ単体で見れば興味深いエピソードですが、本作の結末を導き出す上では必要なかったはずです。

本作を全否定することになり兼ねませんが、「ミチル」と「その夫」の話は別個の作品として読みたかったです。
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[2011/11/11 17:35] | ★★
[tag] 佐藤正午
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乱反射 (朝日文庫)乱反射 (朝日文庫)
(2011/11/04)
貫井徳郎

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評価:★★★

思わず眉をひそめたくなる言動、かといって表立っては非難出来ない。なぜなら誰しもその程度のことなら思いあたる節があるから…

虚弱体質の大学生、森林伐採に反対する専業主婦、車庫入れが苦手なデパート店員、「大過なく」を理想とする市役所職員、責任を持つことを避けてきた内科医…それぞれの本当にちょっとした利己的な行動が、幼い命を奪う一因となっていく…事故で愛する我が子を失った両親はいったい誰を責めれば良いのか?

終盤にかかるまでの群像劇は本当に素晴らしいです。どちらかと言えば『善人』に分類されるだろう様々な登場人物の何気ない日常とその葛藤が個々に描かれていくだけなのですが、終始退屈することなく読ませる作者の筆力は並外れたものがあります。

但し、子供を亡くした父親が事故に関わりのある人々を糾弾していく下りになると途端に退屈な話になります。読者にはその事故が何故起こり、人々がどう関わっているのかがわかっているので、全くサスペンス要素や盛り上がりがありません。さらに、最も引っかかったのが父親がある事に気づき慟哭する場面です。その場面を描いてしまったせいで本書の魅力が半減しています。その事に気づかないからこそ……非常に惜しいです。
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[2011/11/07 19:25] | ★★★
[tag] 貫井徳郎
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風花病棟 (新潮文庫)風花病棟 (新潮文庫)
(2011/10/28)
帚木 蓬生

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評価:★★★★

一遍が五十ページに満たない短編集ですが、その一遍が下手な小説一冊を超えるほど濃密な内容となっています。

「患者」や「病気」ではなく、全て「医師」を主役とした十篇からなる短編集です。医師も誰かの子であり親であり、時には病気に侵されることもある。表紙やあらすじからすると、感動的な物語ばかりを想像してしまいそうですが、どちらかと言えば哀しいエピソードが多く、思わずぞっとする描写も随所に挟み込まれています。

各編に登場する医師達に実在のモデルが存在するのではないかと思うほどリアリティがあるのは現役医師である作者ならではの魅力でしょうか。徹底的に医師の視点に拘った点も新鮮で良かったです。また、各編にシンボルとなる「花」を登場させることで、重くなりがちな話にも情緒的な趣を感じさせてくれます。

強いて難を言えば、物語の構成や着地点が似通った話がいくつかあったので、いっそのこと半分の五編ぐらいに絞っても良かったのでは…それでも十分に読み応えはありますし、シンボルとなる「花」同様に各編が際立ち、より強い印象を読者に与えることになるでしょう。
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[2011/11/04 19:50] | ★★★★
[tag] 帚木蓬生
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